タイルの町多治見市笠原町のモザイクタイルミュージアム

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Lecture1
講演記録1

記者発表会(2014年5月27日 国際デザインセンター)
講演 藤森先生

 タイルの博物館を作るという依頼を受けてから、もちろん何度も現地に行きました。最初どうしようかと思ったんですよね。タイルの博物館だから、まず普通考えるのは、タイルを貼った建物を作るということなんです。だけど、それでいいのかなと。タイルを貼った博物館を作ると、この地域のタイルは特にモザイクタイルですから、絵を描いたり模様を書いたりするタイルなんですよね。当然のように現代のタイルを使うことになるわけです。それで作ったとして、中に入ると、先ほどの話に出た、各務さん達が長年かけて、みんなに古いものどうするんだと言われながら集めてきたタイルを見せたとして、おそらくこれは、本当に誰も来なくなるだろうと思った。
 つまり、歴史的に笠原町がずっと作ってきた笠原地区の経済をずっと長く支えてきたタイルの実物を展示する、外には今作っているタイルを使う、それではごく普通の印象しか与えない。知恵がないというと何だが、それではまずいだろうという気持ちがありました。
 そんな中で、笠原へいって集めているものを見せてもらった。そうすると、町の人たちがなんでこんなもの集めるんだという気持ちも分からなくもないが、結構面白いものもあるんです。

 それは、「今となると面白い」というものです。例えば単純に、流し台に、コンクリート(じんとぎ)では汚いからとタイルを貼ったものがある。考えてみると、なんとなく覚えているけど、実はもうないものがたくさんある。今の人たち、特に若い建築家たちから見たらこんなことにまでタイルを使っていたかと面白いものもいっぱいあり、これは日がたてばどんどん価値が出てくるものだなと思いました。もうひとつには、たくさん集めた価値というのはやはりあるのだと思いました。これを一つの目玉としてどうやって見せるかを考えたのです。
 それから全体のカタチをどうしようかと思いました。結構重要なのでどうしようかと思ったわけです。町の中を歩いているとき、土採り場を見せていただいた。遠くにも削った跡がみえているが、そばに行くと結構面白い。地層を削ってしまうと断面が出てくる、その上に松の木などが生えている。それは面白い光景だなと思って、これを外観にしようと考えました。
 ここからは難しいところですが、これだけではちょっと面白くない。もっというと土採り場というのはわざわざ見るものではない。わざわざ見て面白いのですが、普通の人は見ない、特に地元の人は全然見ない。

 でも僕は面白いと思って、その形から、「おばキュー」の頭みたいなものが出てきて、これでいけるとおもった。この「もこもこもこっ」という形はありそうでない形です。私自身20年以上設計しているが、割合、ありそうでないというか、「変な」というか、私自身は気に入っているが、ちょっと珍しい、普通の建築家たちがやらない形を作るということで、自分で言うのもなんですが、その筋では世界的な評価をいただいている。珍しい設計をするということで通っていまして。この「もこもこもこっ」という形ができたとき、ただの土採り場ではない、土の中から盛り上がった感じが出せるということで、外観を決めました。
 ただ、土採り場だけではタイルというのが出てこない。このままではやきものかもしれないし、土管かもしれない、何だかわからないので、それではまずいということで、土の盛り上がった中に、割ったタイルを埋め込もうと考えました。遠くで見ると、土がわーっとあって部分的に色のついた輝いたものがある。近寄るとタイルになっている。こういうやり方を思いつきまして、これで行けるとわかったわけです。ですから、突然街の中に土採り場が盛り上がって、よくみると土採り場には時々石が混ざっていることがあるが、それと同様にタイルが入っている。

 それから立地ですが、珍しい立地をしていまして、庁舎が立っていますが、丘みたいになっていて、庁舎のところでがくっと、ほぼ1階分落ちています。 最初は、現在の庁舎の形、正面から見ると地下に埋まっている、後ろから見ると1階になっているというのをやってみたが、何だか面白くない。そう思って、すり鉢状に入っていく形にしてみました。もこもこっとした形が地上にあっても印象深くない。すり鉢の中に落ち込んでからもこもこっとする。裏側からだと地上になる。身障者などはもちろん裏から入れる。通常はもこもこっとした土採り場に向かって沈んでいくようにして入っていく。これで行けるということとが分かりまして、色々調べても問題ないということになりました。
 次に中をどうするか。先ほど説明がありましたように、1階はホール的機能、2階は産業振興、3階は歴史です。一番の、ずっと集めてきたタイルは、1番上の階で見せようということで、ここがタイルミュージアムの一番の見せ場になるわけです。
 どうしようかと思って、一番苦労しました。
 普通は、入ると吹き抜けがあってずっと登っていくと、展示会場があるという形が考えられますが、中央に吹き抜けを作ると空間が分断される。何度も案を作ったが駄目だった。どうしようかと一番迷ったわけです。

 それで、いっそ直接上がっていく吹き抜け的な階段を北側の裏側に作ろうと。1階からちょっと上がってから、ずっと長い階段をあがっていくのです。それは穴の中を上がっていくと、向こうから光が入ってくる感じです。 各階に途中で入ってもよいし、エレベーターで上がってもよいが、一生懸命上がっていくと、そこに半屋外の歴史的なタイルの展示室があるという形にしました。
 画像(図版)の、ここのブツブツしているのは白系のモザイクタイルで、全面的に床から壁まで貼りまして、そこに今までのコレクションを全面的に貼って見せる。屋根に穴があいていてそこから光が入ってくる。
 もちろん伝統的な使い方のものがあるのですが、ちょっとだけ、せっかくタイルの博物館だから実験をしたいと思いまして、それでタイルのカーテンができないかと思ったんです。それで実験をしていただいたのです。
 ワイヤーをまずたらします。横方向もワイヤーのリングでつなぎます。タイルをボンドでつけることが、一つの方法としてあるのですが、そのボンドでタイルを貼り付けると、すだれというかカーテンのようなものができるのではないかと。やったことはなかったが、頭の中ではできると思って、やっていただいたらちゃんとできるということが分かった。そして世にも珍しいタイルのカーテンというか「すだれ」ができます。この中に入ると、カーテンの上部から青空が見えるという形になります。

 ここから光に導かれて階段を上るわけですが、この階段を全部土で覆います。ここにドーンと空間が開くことになるので、相当長い土の穴ができるわけで、これは相当な迫力だと思います。光が差し込んでいますので、元気な人はトコトコトコトコ登っていく。全部土で覆っているところがポンと開いて、タイルの世界が展開すると。
 ここではタイルというものが大地の土からできたものである、その土を人間が加工してタイルができたことを伝えたい。つまりタイルというのは、いわゆる鉄やガラスなどの普通の工業製品とは違う性格があって、非常に豊かな表情をもたらすということです。仕上げだけではなくて、色々な多様な表現をもたらすことができまして、そういうものが土から生まれてくると。人間が土を踏んで手でこねてタイルまで持っていく、その土とタイルというところを表現しようと思ったわけです。これで行けそうだということで最終案にしました。
 僕がうれしかったのは、このロゴマーク(図版)をつい最近見せていただいたことです。
 隈研吾さんが、20年前に処女作である私の建物を見て、「見たこともないのに懐かしい」、と言ってくれた。懐かしいというのは大抵見たことのあるものだが、見たこともないのにどこか懐かしいというのが私の建物の特徴だと言ってくれたわけです。

 この建物の形も、実際にはどこにもない形、建築としては相当へんな形ですが、どこか人の心にスッと入るところがある。
 このロゴマークの気に入ったところは、ふつうはこういうのはロゴマークと言わない。ふつうロゴマークというものは、何だかわかるものです。これだけ見ては何だかわからない。下の部分が敷地をさして、上の部分が建物です。 わからないけど印象に残るという点は、私の建築にも通ずるところです。一度見たら頭に形が入るけれども、いってみないとよくわからない。そういうマークなので、大変気に入っています。
 これから時間をかけて細かいところをやらなくてはならないが、ほとんど目に見えるところは自然の産物か、土からできたタイルでやっていくので、大丈夫だろうと安心しております。
 もうひとつ、直接関係ないかもしれないが、敷地内に公衆便所がある。これは前からずっとあるものでして、デザインは好きではないが相当立派なトイレです。先生、壊してもいいですといわれたが、私は一応歴史の先生でもあるので、なんでも壊したらいいとは全然考えていない。

 その時、笠原の人たちが、ごみステーションをカバーしているという話を聞いて、下から上まで市民と一緒にモザイクタイルで貼ってしまおうと。
 色々な材料で建てられていますが今の技術であれば何にでも貼れるので、全部この形のまま貼ってしまおう。時計があるので、時計の針だけは貼らないようにということで、実験していただきました。結構心配でした。私はなんでも自分でやってみることにしているので、やってみたら、結構簡単にできました。接着剤はつくと取れないので手袋は必要ですが。これから面白いタイルで包まれたトイレを作ります。入ってくるとおそらく最初に目に入るので、真珠の光沢をもつタイルを使おうと考えています。中に入ると昔のトイレです。私にとっては、重要な働きをするのではないかと。市民の皆様とタイルを貼る日を楽しみにしております。
 (この施設は)出来上がれば、市民の皆様にとっても、全国の皆様も、世界からも見に来て下さる場所になるだろうと。タイルの古い世界と、新しい世界を知ってもらえる場所になれば、私としてはうれしく思います。

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